The Wealth Ladder 解説 — 『JUST KEEP BUYING』著者の新作「資産6段階モデル」を日本語で
『JUST KEEP BUYING』(邦訳13万部超)で知られるニック・マジューリが、2025年に第2作 The Wealth Ladder: Proven Strategies for Every Step of Your Financial Life を出しました。2026年7月時点で邦訳はありません。本記事では、出版社の書誌情報と本人サイトをもとに、この本の枠組みを日本語で整理します。
- 純資産を10倍刻みの6レベルに分け、「レベルごとに効く戦略が違う」と説く資産形成の地図
- 各レベルは「何を気にせず買えるか」という生活実感で定義される(食料品の自由→外食の自由→旅行の自由…)
- 実用ルールの代表が「0.01%ルール」— 純資産の0.01%以下の買い物は悩む時間が無駄
- 前著が「買い続けろ」という航法なら、本書は「自分の現在地」を示す海図。役割が異なる
この本の中心アイデア
主張は一文に要約できます。「ある資産レベルに到達させてくれた戦略が、次のレベルに連れて行ってくれるとは限らない」。
節約で資産1,000万円は作れても、節約だけで1億円には届かない。収入を増やす戦略が1億円を作っても、その先は資産自体の運用と構造が支配的になる — 資産形成の議論が噛み合わないのは、話者が違うレベルの住人だからだ、というのが本書の診断です。
6つのレベル — 10倍刻みの階段
各レベルは金額だけでなく、「何を値段を見ずに買えるか」という生活実感で定義されているのが特徴です。
The Wealth Ladder — 6段の資産階段(各段は純資産10倍刻み)
各レベルの間には10倍の距離がある。「頑張っても景色が変わらない」のは同一レベル内の移動だから
10倍刻みという設計が効いています。レベル内での前進(300万→600万円)と、レベルを跨ぐ移動(600万→3,000万円)は難易度がまったく違う。多くの人が体感している「頑張っているのに景色が変わらない」感覚は、同一レベル内の移動だからだ、と説明がつきます。
実用ルール:0.01%ルールと1%ルール
本書から広まりつつある2つのルールがあります。
- 0.01%ルール — 純資産の0.01%以下の支出は、悩まず使ってよい。純資産1,000万円なら1,000円。「この出費はアリか」を毎回悩む認知コストのほうが高くつく、という割り切りの基準
- 1%ルール — 追加で稼ぐ機会(副業・案件)は、純資産を1%以上増やすものだけ受ける。資産が増えるほど「時間を売る小さな仕事」から降りるべきタイミングを教えてくれる基準
どちらも「金額の絶対値ではなく、自分の純資産に対する比率で判断せよ」という本書の思想の応用です。レベルが上がれば基準額も自動的に上がります。
『JUST KEEP BUYING』との関係
前著と本書は対になっています。
- JUST KEEP BUYING(邦訳あり):何をすべきか — 買い続けるという「航法」
- The Wealth Ladder(邦訳なし):自分がどこにいて、何が効くか — 現在地を示す「海図」
前著の教え(積立を続ける)はレベル2〜3では最強ですが、レベル4以降では収入源の複線化や事業・不動産の比重が増す、というのが本書の追加部分です。邦訳を読んだ日本の読者ほど、続きにあたる本書の空白は大きいはずです。
賢人録の視点
著者は運用会社Ritholtzの現役COOで、当メディアが扱う人物の中で実績の検証可能性がもっとも高い書き手です(実名・実職・出版社発表の部数)。「NYタイムズ・ベストセラー」の表記は本人サイトによるものなので、その点だけ出どころを付しておきます。データドリブンな作風は前著と一貫しており、日本の読者が数字の誇張を警戒せずに読める、数少ない海外金融書です。
The Wealth Ladder は「資産形成の議論が噛み合わない理由」を6段の地図で解く本。いま自分がどのレベルにいるかを特定し、そのレベルで効く戦略に集中する — 邦訳前の現時点では、本記事と原著(または本人ブログ)がその入口になる。
よくある質問
The Wealth Ladder に日本語版はありますか?
2026年7月時点で邦訳の情報は確認できません。前著『JUST KEEP BUYING』は邦訳が13万部を超えており、いずれ翻訳される可能性はありますが、現時点では英語版のみです。
『JUST KEEP BUYING』を読んでいれば十分では?
前著は「買い続ける」という航法の本、本書は「自分がいまどの海域にいるか」という海図の本で、役割が違います。特に資産が増えて戦略の切り替え時期にいる人には本書のほうが効きます。
6レベルのどこからが「富裕層」ですか?
本書の枠組みでは、レベル4(純資産100万〜1,000万ドル)以上が一般に言う富裕層に相当します。ただし本書の主眼は線引きではなく、各レベルで最適な行動が変わることの説明にあります。